■アパート・マンション、最大の問題は“音”
私自身も若いころアパートに暮らしていたので
良くわかります。
「夜中だというのに、隣人が客を呼んで酒盛りを始めた」
「上階に住む住人の子どもが走り回る音が響く」
「窓を開けて大音量で楽器を演奏する、あるいは音楽を聴く」
「椅子を動かす音が聞こえる」
集合住宅に住んだ経験をお持ちの方は、
一度はこのような音に関するトラブルに
遭遇したことがあるのではないでしょうか。
上下階や左右の住人と壁一枚で隔てられた
アパートやマンションでは住戸間の
騒音がトラブルの火種になることが多く、
退去理由や不満点では音に対しての
意見が常に上位を占めます。
調査機関が行った2011年に賃貸住宅の
入居者に行ったアンケートによれば、
持家に比べ賃貸住宅で不満に
思う点の上位は下記のようになりました。
・防音(上下の音や隣の家の音) 38.4%
・全体の収納量 34.2%
・キッチン(大きさや配置) 26.2%
・収納の使い勝手や配置 22.6%
・テラスや庭 21.2%
2~5位は収納や庭についての不満で
占められており、スペースが限られがちな
賃貸住宅において広さが大きな課題と
なっていることがよくわかります。
しかし、1位はそれらを抑えて「防音」に
関する不満が挙げられており、集合住宅において
住戸間の生活音がどれほど
ストレスを生み出すかが分かります。
そもそも集合住宅において音が問題になるのは、
住人同士が交流しなくなり、関係性が
希薄になったことが大きく
影響していると言われています。
例えば、顔見知りの家族の
子どもが上階でドタバタしていれば、
「ああ、またあの子が騒いでるのか。
うるさいけど、元気な証拠だし
子どもなら仕方ないよね」
と多少大目に見るくらいのゆとりが出てきます。
しかしこれが上階に住んでいるのが
誰とも分からない家族になると、
自分にとっては騒音をもたらすだけの
迷惑な住人になります。
賃貸住宅で音に関するトラブルが
絶えないのは、隣人が友人ではなく
他人になったことで、音に対する
許容範囲が狭くなっていることも
原因の一つだと考えられます。
■戸建住宅でも遮音性に不満あり?
「いやいや、音が問題になっているのは
アパートやマンションの話であって、
戸建では関係ないんじゃないの?」
と仰る方も多いのではないかと思います。
確かに個々の戸建住宅は建物同士が
離れているため、直接壁や床を
伝って音が響くことはなく、集合住宅ほど
音に関するトラブルは多くありません。
しかし近年は住まい方や生活環境の変化によって、
戸建住宅でも音に対して敏感な住人が増えており、
決して無関係とは言えなくなってきています。
住宅産業協議会が注文住宅建築者
(2010年築)を対象に行ったアンケート調査では、
・外部との遮音性への満足度 88.2%
・上下階との遮音性への満足度 80.1%
・隣室間の遮音性への満足度 80.1%
以上のように、いずれも8割以上が遮音性に
満足しているとの結果が出ています。
一見して音環境への満足度は高いようにも見えますが、
遮音以外も含めた全項目平均の満足度は87.1%で、
平均を上回っているのは「外部との遮音性」のみです。
上下階・隣室間の遮音性への満足度80.1%は
全57項目中最低の満足度で、戸建住宅に
含まれる様々な要素の中でも不満に
思っているユーザーが多いことがわかります。
また、同アンケートでは
「家を建てる際に重視した点」
についても調査しています。
その調査結果は下記のようになりました。
・外部との遮音性を重視した 59%
・上下階との遮音性を重視した 41%
・隣室間の遮音性を重視した 35%
このように住宅を建てる際には、
外部からの遮音性を重視しても、
住宅内での遮音には気を配っていない
ケースが多いことがわかります。
以上2つのアンケートの結果から、
「建てる前は気にしていなかったが、
実際に家を建ててみると、
同じ家の中であっても
上下階、隣室間から伝わる音が気になる」と
感じるユーザーがいることがわかります。